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[「中世学」あるいは「中世研究」という大きな枠組みの必要性]
I.
上で、日本においては「中世学者」の交流は限られていると述べました。もちろん、幅広い交流をもたれている研究者個々人はいらっしゃるでしょう。しかし、それは個人的な努力に負うものであり、組織的に「中世学者」の交流が図られているかどうかという点で、欧米の状況と日本の状況は対照的です。
まず、アメリカには The Medieval Academy of America という中世学全般をカバーする学会組織が形成されており、毎年3月に場所をかえながら、総会 annual meeting をひらいています(この学会の機関紙が有名な Speculum です)。 また、毎年5月には、ミシガン州カラマズー Kalamazoo にある Western Michigan University で、International Congress on Medieval Studies がひらかれ、文学、歴史学、哲学、神学、音楽学、歴史言語学、考古学などの分野を越えて、毎年1300人以上の研究者・院生があつまっています。
イギリス、フランス、ドイツの各国には同様の組織はありませんが(ある場合にはご教示いただければ幸いです)、英国リーズ大学 University of Leeds にある Institute for Medieval Studies が毎年同地で開催する International Medieval Congress がアメリカのカラマズーに匹敵する規模を誇り、カラマズーのヨーロッパ版として機能しています。
さらに、ヨーロッパには、F.I.D.E.M. (Fédération Internationale des Instituts d'Études Médiévales) (国際中世学研究所連合ととりあえず訳します)という団体が、現在はジャクリーヌ・アメス Jacqueline Hamess ルーヴァン(ベルギー)大学教授を中心として、中世学者のネットワークと若手研究者養成のために活発な活動をしています(くわしくはF.I.D.E.M.のウェブサイトを参照してください)。
こうした状況をみるときに、一般に学者層が必ずしも厚くない(中世哲学や中世英文学のように世界的に見ても非常に研究者層が厚い例もありますが)日本の中世学者たちの相互交流が限られていることに気づくでしょう。
II.
もちろん、それぞれの分野における独自の蓄積は膨大なものがあり、上に述べたカラマズーやリーズの中世学会でも、数多くの個々の専門学会がそれぞれのセッションをスポンサー(後援)し、研究者は自分の研究分野にもっとも関連の深いセッションに出席するので、みなが全部の分野に通じているということは当然ありません。それでも、中世という時代に関わる様々な事象を扱う研究者が一度にあつまることによって、分野を越えた相互交流 cross-pollination の可能性がひらけているということの意義は、現在日本で思われているよりも非常に大きいものがあります。
(未完:続く(はず))
赤江雄一 日本学術振興会特別研究員(中央大学)
http://web.mita.cc.keio.ac.jp/~yakae/
Email: y-akae@tamacc.chuo-u.ac.jp
(@が全角になっていますので、半角になおして使ってください)